超協力タカ派戦略と資源分配:Super-cooperative hawk strategy and resource distribution

SHINICHIRO HONDA

超協力タカ派戦略では、集団内の同一性が高いほど、他の集団との闘争に有利なので、なわばり内の資源を、平等あるいは公平に分配する必要がある。特定の個人が資源(食料)を独占するのは、厳禁(タブー)であり、そのような、平等で結束の強い集団だけが、ライバルに勝って存続できたはずだ。

資源を獲得する能力を有する個体Aからみた場合、Aが他の個体に与える(分配する)時間当たりの資源量をRg、Aが他の個体から受けとる(分配される)時間当たり資源量をRtとする。また、Aと他の個体との遺伝的距離をdとする。Rt/Rgは、資源を「与える量/受け取る量」、あるいは資源の「分配量/被分配量」、あるいは資源の「交換比率」である。


d:遺伝的距離
Rg:与える資源量(時間当たり)、give
Rt:受け取る資源量(時間当たり)、take

Aと遺伝的にもっとも近縁なのは、Aの親、子、兄弟姉妹であり、近縁度は1/2である。次が、祖父母、孫、オジ、オバ、甥、姪で、近縁度は1/4である。これらの近縁親族はAのコピーなので、Aが彼らに資源を与えるときは、無償(Rt/Rg=0)が合理的である。血縁関係が薄くなるにしたがって交換比率は大きくなり、同じ集団内では、等価交換(Rt/Rg=1)による相互贈与になる。等価交換による相互贈与でなければ、集団の中に不満が生じて、集団の協力と結束を維持できないためだ。

Aにとって、他の部族は、資源をめぐって闘争するライバルなので、資源のやり取りは、「略奪」か「被略奪」かのどちらかである。闘争に勝てば資源(なわばり)を奪うことができ、負ければ資源(なわばり)を奪われる。

集団同士は、資源が豊富なときは、闘争しないほうが有利だが、資源が不足するときは、相手から資源を奪わない限り、自分たちが生存することができない。食料となる植物や動物は、季節や年次で変動する。資源が豊富なときは、個体数が指数関数的に増大する(マルサス)ので、なわばり内の利用可能な時間当たり資源量が不足するのは、論理的に必然である。すなわち、時間当たり資源量が無尽蔵であるか、個体数の増加を抑制しないかぎり、生存闘争は不可避である。

ダーウィンは、生存闘争について次のように述べる。

A struggle for existence inevitably follows from the high rate at which all organic beings tend to increase. Every being, which during its natural lifetime produces several eggs or seeds, must suffer destruction during some period of its life, and during some season or occasional year, otherwise, on the principle of geometrical increase, its numbers would quickly become so inordinately great that no country could support the product. Hence, as more individuals are produced than can possibly survive, there must in every case be a struggle for existence, either one individual with another of the same species, or with the individuals of distinct species, or with the physical conditions of life. It is the doctrine of Malthus applied with manifold force to the whole animal and vegetable kingdoms; for in this case there can be no artificial increase of food, and no prudential restraint from marriage. Although some species may be now increasing, more or less rapidly, in numbers, all cannot do so, for the world would not hold them.

「生存のための闘争は、すべての生物が増加する傾向が高率であることから、必然的に導かれる。生存期間中に卵や種子を生産するすべての生物は、一生のある時点、ある季節、ある年に破壊されなければならない。そうでなければ、幾何級数的な増加の原則によって、個体数は、どんな地域でも生産物を支えることができないほど、急速に非常に大きくなる。したがって、生存可能な個体数より多くの個体が生産されるにつれて、同じ種の別の個体、または異なる種の個体、または生命の物理的状態と、生存のための闘争が存在しなければならない。これは、マルサスの理論であり、すべての動物界と植物界の多方面に、その理論を適用している。動物界や植物界では、人為的な食料の増加はなく、結婚の慎重な制限もないためである。現在のいくつかの種は、個体数が急速に増加しているかもしれないが、地球が支えられないため、すべての種がそうなることは不可能である」(種の起源、第3章)
(つづく)

文献
Charles Darwin, The Origin of Species, 1859-1872
Malthus, An Essay on the Principle of Population, 1798-1826

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