玉,工,巨,左,右 Jade, Craft, Giant, Left, Right

SHINICHIRO HONDA


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「玉」の文字は,説文では「三玉の連なるに象る,┃はその貫なり」とあり,紐に玉を連ねた形とされる。王国維は,「古制の貝玉は皆五枚を以って一糸と為す」と述べており,必ずしも三玉のみではないとしている。「玉」の解釈については,ほとんど異論が無い。

「工」の文字は,説文には「巧飾なり」とあるが,異論が多い。孫海波は,淮南(子)道応順に「元玉百工」とあることから玉が連なる形とする。呉其昌や加藤常賢先生は,斧の形としている。藤堂明保先生は,2枚の板に穴をあけて棒を通す形とする。

「コ」あるいは「コウ」の音は,「固い」という意味であり,古,固,枯,工,甲,更,岡,杭,肯,厚,咬,黄,硬,絞,鉱,粳,構,鋼,構などの文字がある(Ankh,示,帝,ケイ,皇,古,十,夬,マ(M))。すなわち,「工」は,翡翠などの硬い材料に穴をあけた物の形と考えられる。「工」を紐で連ねた形が「玉」の字である。「工」には「硬い」とか「骨が折れる」という意味が含まれるので,「攻」や「功」の字に使われている。「攻」は硬い相手を手に持った武器で叩く形であり,「功」は骨が折れる事に力を入れる形である。

「巨」の文字は,説文は定規を手に持つ形とするが,加藤先生は斧の柄を通す穴とする。「キョ」の音には,虚,距,去など,「穴」や「空」の意味があることから,「巨」は「工」(玉)の穴の象形と考えられる。

「ナ」(サ)の文字は,説文では左手の象形とある。「左」の文字は,加藤先生は「工」に従い「ナ」の声とし,工事を佐助する意としている。「又」の文字は,説文には手の象形とあり,「右」の文字は,「口に従い又の声」としている。加藤先生は,寄り添って口で勧助するのが「右」の原義としている。

「サ」の音には,佐(たすける),「ささえる」などの意味があり,「左」の字は,左手で「工」(硬い玉やその材料)を持つ(支える)形である。「ユウ」の音は,湯,融,游,宥,由,油,勇,湧,「ゆるい」,「ゆらゆら」,「ゆれる」など,液体状の物が湧いたり流動したりすることを意味する。「右」の「口」は,溶融した銅を入れた坩堝の形であり,「右」は右手で液体状の銅を持つ象形と考えられる。すなわち,硬い材料を持つ(支える)手が左手であり,溶融した銅を持つ手が右手であるということを示しており,左手と右手の特性および機能の違いを表現している。

Reference,Citation
*1) Ankh,示,帝,ケイ,皇,古,十,夬,マ(M)
*2) 戈,我,平,白,用
*3) 神概念4,ラ,𠂤,巴,労
*4) 加藤常賢. 1970. 漢字の起源. 二松学舎大学東洋学研究所別刊第一, 角川書店.
*5) 藤堂明保, 加納善光. 1980. 現代標準漢和辞典. 学研.
*6) 許慎. 説文解字. 中國哲學書電子化計劃.

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