産地投師 対話1(2020.1.8)

SHINICHIRO HONDA

この論は,土壌論と世界の食料生産の側面から,ひとつの歴史認識を提示し,制度(法)を論じたものです。法とは,国民全体の利益を最大化するためのルールのことであり,個々の農家の利益と一致しないのは当然です。とくに,消費者の利益と農家の利益は対立します。

ここでは,農業経営については,述べていません。農業経営では,個々の農家が利潤を大きくすることが目的であり,土壌が肥沃になることや,作物が豊作になることは,農家の利潤とは全く関係がありません。むしろ逆であり,農家は,豊作の年は赤字になり,不作の年が儲かります。個々の農家は,自分の利潤を最大化するように行動するのが合理的であり,当然のことです。

若いころに,全国の農村をまわっていましたが,茨城や群馬あたりに行くと,「産地投師」と呼ばれる人たちがいました。休耕している畑を借りて,白菜などを大規模に作付けます。数年間栽培して,畑の地力が落ちたり,連作障害が出ると,別の休耕畑を借ります。関東だけでなく,青森県など東北各地まで作付けに行っていました。時期をずらして大きなロットで出荷するので,卸,量販店,市場に対して有利に価格交渉できます。中国まで作付けにいく人もいました。それが一番儲かるのでしょう。

また,先進国と途上国では大きく状況が違いますし,食料は国家の安全保障や豊凶など,さまざまな側面があります。日本には日本独自の状況があり,農耕の一般論だけで論ずることはできません。

生物は,個々の個体の寿命が短かく,寿命のあいだに自分の利益を最大化しようと行動することは合理的です。しかし,未来を含めた種全体では,共倒れしたり,資源が枯渇したりして,絶滅してしまうことがよくあります。

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