政治的な立場について Political position

SHINICHIRO HONDA

世の中には,保守,革新,リベラル,リバタリアン,民主制,独裁制,自由主義,全体主義,一国主義,国際主義,右翼,左翼など,政治的な立場をあらわす言葉がたくさんある。しかし,それらの意味や関係について,よくわかっておらず,意味や用語が混乱している。政治的スペクトルの研究もたくさんあるようだが,成功していない。

ここでは,政治とは,資源をめぐる闘争とする。資源の根源はエネルギーであり,時間当たりの利用可能エネルギー量には限界がある。つまり,政治とは,同種内でのエネルギーの分配をめぐる闘争のことである。

なお,保守,革新という言葉は,現状からの変化に対する態度のことなので,政治的立場には入れない。また,「リベラル」という用語は,時代と場所によって意味が全然違う。民主制,独裁制,君主制などは,集団を組織するためのシステムのことであり,ここでの政治的な立場とは異なる。たとえば民主的な投票で,皇帝や独裁者が選ばれることはふつうにある。

人間は超協力タカ派戦略をとっており,集団内と集団間では,闘争行動がまったく異なる。集団内では個体同士が協力(同一化)して強く団結したほうが,他の集団との闘争に有利だ。しかし,同一化しすぎると,情報の変異速度が小さくなって不利になる。

また,近代以降は,集団双方が共倒れするほど武器が高度化しており,全面戦争はお互いの生存に不利である。現代の人間は,闘争のパラドックスのなかにある。

集団内での資源分配
同一化 差異化
集団間での資源分配 差異化 存在しない 集団内で不平等∧集団間で不平等
同一化 集団内で平等∧集団間で平等 集団内で平等∧集団間で不平等

生物は,変異しながら自己複製する情報であり,情報は遺伝子プールに蓄積される。エネルギーが豊富なときは同一化するのが有利だが,個体が増えて遺伝子プールが大きくなると,個体当たりのエネルギー量が減る。「自分のコピー」がライバルになって(しっぺ返し),個体の生存確率が小さくなるので,「自分のコピー」から差異化した個体が有利になる。

一般的には,現状の分配が少ない人は同一化を求め,分配が多い人は差異化を求めるのが合理的だ。また,将来に1人当たりエネルギー量が増えると予想できるときは,自分も分け前を得るために同一化(平等化)を求める立場が優勢になり,1人当たりエネルギー量が減ると予想しているときは,自分が少しでも多く得るために,差異化を求める立場が優勢になる。

参考
社会脳による共倒れ抑止
ホモ属の超協力超タカ派戦略
表現型変異の速度
差異性向、不確実性性向
パン属、ホモ属、ヒトの進化的な安定
超協力タカ派戦略と資源分配
武器と資源獲得の不確実性
非貯蔵社会における資源分配
情報(知識)の変異速度
ヒトの超協力タカ派戦略とポトラッチ

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