貨幣の供給2(2020.2.2)

SHINICHIRO HONDA

市場社会では,次第に貨幣が蓄積し,一方では欠乏がおきます。富裕層から徴税して,蓄積した貨幣を供給するのは困難で,どこの国でも成功していません。選挙ではお金が無いと政治家になれないので,先進国では富裕層への重税を支持する政治家が少ないからです。

一方,貨幣が欠乏して貧困層が増加すると,社会が不安定になって,国家社会主義化しやすく,他国や異民族に対して攻撃的になります。国内の矛盾を隠蔽して,矛先を他の集団に向けるのが楽だからです。戦前の日本やドイツのようになります。

なので,貨幣を増やして,国民に配ることが必要です。

問題は,お金の配り方です。低所得者という理由だけでお金を配ると,消費が増えて景気がよくなりますが,国民は低所得になることを恐れなくなって競争しなくなるので,賃金が上昇して財の競争力が小さくなります。財の競争力が無くなると,輸出が減って,円が買われなくなって,円安になります。円安になると,エネルギー価格(石油,天然ガス,穀物)が上昇して,インフレになります。

インフレになることは,貨幣の蓄積量が減少することなので,国内では好ましいのですが,貨幣安は外貨やエネルギーとの交換比率が不利になるので,国全体では貨幣量が減って,長期的には不利になります。60年代のイギリス病とか,90年代に原油安でルーブルを乱発して崩壊したソ連の状態になります。

貨幣の供給は,国家と国民の競争力を弱めないように,注意深く配らなければなりません。教育(子供や親に直接お金を配る)やエネルギー開発(エネルギー代を安くする)などがまず先でしょう。配り方も,「子供や親に直接お金を配る」ことが重要で,戦略なく学校に補助金を配ると,学校はお役人の天下り先になり,教育の質や公平さが低下して,結果的には競争力が弱くなります。

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