C3植物(アスパラガス、イネ、トマト、果樹)の光呼吸時養分量モデル

SHINICHIRO HONDA

前回は、多年生植物の年間の理想的な生育量と養分量のモデルを考えた。では、暖地のイネやアスパラガスの栽培では、どのようなことがおこっているのであろうか?

北海道で露地アスパラガスが萌芽し始めるのは、5月上旬だが、九州のハウス半促成栽培では、2月下旬から萌芽が始まる。つまり、2ヶ月以上も早く生育が進む。

アスパラガスとイネの光飽和点は、4~5万ルクスであることは先述した。一方、真夏のころの西南暖地では、圃場の照度は10万ルクスを超える。さらに、盛夏期のハウス内の温度は、40℃以上になる。この条件のもとでは、C3植物は、光呼吸が光合成速度を上回り、同化産物が減少して生育が衰えるのは確実だ。じっさいのアスパラガスの試験データでも、8月の現物重、乾物重は減少する。これは、長崎のみならず、北海道の試験データでも減少している。また、イネの場合は、近年、高温障害による白未熟粒が大問題になっている(ただし、イネの高温障害は、光呼吸と関係付けて研究されていない)。

以上のように、生育期間が長く、かつ夏季の高温高日照で生育量が低下する場合のモデルを作ると、以下のようになる(数式はあまりにも煩雑なため省略)。

図24-1

図24-2

図24-3

図24-4

図24-5

図24-6

この光呼吸がおきたときの養分量モデルでは、生育初期に、生育速度が最大になった直後に、地上部と吸収根の養分濃度と養分量が減少する。養分濃度、養分量の時間変化は、長崎県の試験データとよく似ている。施肥量をみると、生長期の途中で、一時的に窒素を中断するのが合理的である。植物の成長が停滞した時期に窒素が過剰にあれば、茎葉が成長しすぎたり(つるボケ)、組織が軟弱になって病害虫が侵入しやすくなる。

植物は、自分で太陽のエネルギー量を決定することはできない。植物が自分で決定できるのは、エネルギー量に見合った水分と養分を吸収することだ。養分量は全身の積分値なので、会社の経理が在庫を集計するように、全身養分量を合算することは無理であろう。しかし、工場の出入口の前に立って、1日に工場から出荷される製品の量(炭水化物)や工場に搬入される原材料の量(水、無機養分)から、工場の生産量(養分量、生育量)を把握することは可能である。すなわち、篩管と道管のどこかで、1日の同化産物などの流量から、現在の養分量≒生育量を把握していると思われる。(つづく)

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