人間の表現型,イワシの群れ Human phenotype,Bait ball

SHINICHIRO HONDA

有利でも不利でも無い対立遺伝子(表現型)が,自然選択を受けず,遺伝子プールに複数存在する状態を,「差異と変異の踊り場」と呼んだ。

人間には,生存に有利でも不利でもない,個人の「好み」が存在する。

大きな協力集団を形成する人間は,集団内での闘争コストを小さくする必要があり,巨大な差異と変異の踊り場を持つようになった。

それならば,人間の集団の中で,強い選択が働くと,「好み」が排除されて,人間の表現型は似るのであろうか。

公立小学校には入学選抜が無く,保育園児には選択が働かないので,保育園には制服が無い。有名私立小学校には入学選抜があるので,有名私立小学校を目指す私立幼稚園には制服がある。

中学校には入学選抜が無いので,小学生には選択が働かず,制服が無い。高校と大学には,入学選抜があるので,中学と高校には制服がある。

大学に入学すると選抜が無くなるので制服も無いが,就職が近づくと全員が全く同じデザインのスーツを着用する。

軍隊は生きるか死ぬかの選択が働くので,制服を着る。戦争がひどくなって誰が死んでもおかしくない状態になると,国民全員が国民服を着る。

美人コンテストに出る人は,姿,形がよく似ている。全員が同じ水着のような服を着る。

イワシやボラが,繁殖時でもないのに群れで同一の行動をとるのは,強い選択圧によって,個体の表現型が同一化するせいであろう。

集団内の個体の同一化が大きくなることは,アリやシロアリのように,組織の機能を高める有利性はあるが,遺伝子や情報の変異速度が小さくなるという不利もある。

アリやシロアリは,不妊個体を同一化し,繁殖個体を差異化することで,矛盾を防いでいる。多細胞生物も,体細胞では同一化(変異速度を小さく)し,配偶子では差異化(変異速度を大きく)する。

しかし,人間はシロアリや多細胞生物の細胞とは違う。

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