価格形成,集団 対話(2020.5.28)

SHINICHIRO HONDA

「日本でもっとも競争力が高い農家」が,種代,段ボール代,自分の機会費用を計算できないと私は思いませんし,理論的にも実際的にもそうだと思います。そのような農家は退場するはずです。

また,価格形成にはある程度のロットが必要なので,「日本でもっとも競争力が高い農家」は,個人や一法人ではなくて,あるていどの人数からなる競争集団です。

価格,独占 対話(2020.5.27)10

もちろん,協力したほうが有利です。渥美のキク,植木のスイカ,八代のトマト,栃木のイチゴなど,強い組合の産地は,市場価格に影響を与えます。アメリカの有機農場のアースバウンドファームは,2万haです。日本の有機農家でも,大きな会社連合があります。

たとえば,植木の組合の幹部が,イトーヨーカドーの仕入れ係に,1玉900円以下なら,うちの組合員は,イトーヨーカドーにスイカを売らないと宣言すれば,900円以下になりません。別にそれで何の問題もありません。日本中のスーパーのスイカが900円以上なら,消費者は別に高いと感じません。何個も食べるわけではないのです。しかし,これを続けると,日本のスイカ価格は,海外に比べて大きく高くなるので,どこかのやり手のスーパーの仕入れ係が,ベトナムで日本向けのスイカを作っていないか探しはじめるでしょう。

価格,囚人のジレンマ 対話(2020.5.27)8

SHINICHIRO HONDA

JAの目標が間違っているというわけではありません。一人の農家の生産量は,全体の量に比べてきわめて小さい部分しか占めません。価格は全体の需要量と供給量で決まるので,一人の農家が生産を増やそうが減らそうが,価格にはまったく影響がありません。つまり,価格が下がるかもしれないと思っていても,生産量を減らすよりは,増やすほうに行動するしかないのです。囚人のジレンマです。