インフレなき財政ファイナンスの条件

最近、MMT(Modern Monetary Theory)という主張がはやっているらしい。超低金利では政府債務は問題でないという理由のようだが、それではなぜ超低金利になっているのかの説明になっておらず、超低金利が根本的な理由でもない。

超低金利の理由は、世界的に貨幣のストックが増大し、フローとフロートが停滞しているためだ。

不況と恐慌の本質
ストックされた貨幣の増大
恒常所得と貨幣量
貨幣の供給


Mt:貨幣の総量
Ms:とうぶん使う予定がなくストックされた貨幣量(stock)
Mft:自由に使えるが流通していない貨幣量(float)
Mfw:財と交換され流通している貨幣量(flow)
Mt=Mfw+Mft+Ms

ストックが増大してフローとフロートが停滞するということは、使ったり活用したりせずに貯めておくお金が増えることなので、低金利になるのは当然だ。ストックが増大する理由は、世界戦争や革命がなく、ストックを保有する先進国の人口増加が停止し、かつ富裕層からの徴税が困難なためだ。投資先は国内法が及ばない他国なので、投資がそれほどすすまず、フローとフロートが大きくならない。賃金が安い国は社会が不安定なばあいが多く、投資のリスクが大きいためだが、最近は移民政策も支持されなくなっている。

次に、日銀が財政ファイナンスによって貨幣を増やしても、インフレにならない理由は、日本の人口が増えず、賃金が上がらず、日本人が生産する商品の競争力が大きいためである。

発行した貨幣は、社会保障や財政支出に使われるので、その分の円のフローは増える。しかし、日本人がつくる商品は競争力が大きいので、輸出量が多い。海外で日本の商品を買って日本の企業にドルで支払うと、日本の企業は賃金を払うためにドルを売って円を買う。貨幣を発行しても市場では円が買われて円安にならず、国内人口は増えず、賃金は上昇せず、増やした貨幣は貯蓄されるので、インフレにならない。

インフレになるのは、中国や東南アジアなど、投資が増えて賃金が上昇し、フローとフロートが増大する国だ。

なお、日本がインフレになるのは、おもな輸入品であるエネルギー(石油、天然ガス、穀物)の価格が上昇したときだ。

しかし、国家の財政規律が緩んで、政府が労働者と企業を過剰に保護するようになると、社会の競争力が小さくなる。競争力が無くなると、輸出が減って市場で円が買われないので円安になってインフレになり、貨幣を発行すればインフレが加速する。80年代の原油安で、ルーブルを乱発して崩壊したソ連の状態になる。

インフレなき財政ファイナンスが可能なのは、競争力が大きい国だけある。

また、財政ファイナンスによって政府債務が増大しても、将来世代の負担が大きくなるわけではない。なぜなら、政府と中央銀行は本質的には同一であって、債務者と債権者が同一だ。債権者と債務者が同じなので、全体としては債務と債券の合計はゼロである。つまり、将来も大きな競争力が維持されることとエネルギーの確保が重要なのであって、財政ファイナンスによる政府債務そのものは重要ではない。財政ファイナンスによる政府債務の増加は、それだけ貨幣を印刷して増やしたということにすぎない。

cf
古代メソポタミアの徳政令
為替と賃金
財、貨幣、価格の根源-エネルギーと差異

投稿者: jcmswordp

著述、企画、編集。農家が教えるシリーズなど

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