ヒトの寿命:Human life span

よく知られていることであるが、サケやベニザケなどサケ科サケ属の魚は、産卵を終えると、数日で死んでしまう。その遺体は川の栄養分を豊富にして、水生昆虫などが増殖し、昆虫は孵化した稚魚のエサとなる。遺伝子を効率よく存続させるためには、産卵後に親サケが死ぬことは、きわめて合理的な方法である。

また、カマキリのオスは、その25%が交尾後にメスに食べられて死ぬという。メスは、オスを食べることで、交尾期の栄養分の60%以上を得られ、オスを食べたメスは、食べなかったメスに比べて2倍以上の卵を産む(文献)。オスが食べられて卵の栄養になることは、遺伝子からみれば、もっとも無駄が無い資源利用だ。

一方、ヒトでは、生殖期をすぎてから30年以上も生存する。生殖期をすぎたあとの期間を後生殖期というが、ヒトにもっとも近い生物種であるチンパンジーの後生殖期は数年しかなく、ヒトは極端に後生殖期が長い生物である。

生殖能力がなく、自己複製できないのに、何十年も生存するのは、サケやカマキリの例から考えると、資源の無駄である。「利己的な遺伝子」からすれば、生殖期をすぎた個体は早く死んで、子孫が資源をすべて利用したほうが、遺伝子の存続に有利なはずだ。

前回のブログで書いたように、ヒトの集団は、情報の変異速度が大きいほうが、ライバル集団との生存闘争に有利である。


I:情報プール
bm:情報プール内の個体
yn:弓矢
kn:ynの製法(知識)
f:kn→yn
tcn:製法の変異(kn-1→kn)が起きる時間
tsn:情報プール内に製法knが伝播する時間
n0:情報プール内で生じた情報の変異の回数
nf:情報プール内で生じた有利な情報の変異の回数
s:選択率
vI:情報プールの情報の変異速度
nf=n0×s
vI=dnf/dt

このモデルでは、情報プールIが大きいほど、情報の変異速度vIが大きくなる。情報プールは、脳に蓄えられた情報が多いほど大きくなるので、豊富な知識を有する人が多いほど、情報プールが大きくなるはずだ。

すなわち、ヒトの後生殖期が長いのは、長命なヒトが情報の貯蔵庫の役割を果たしてきたためと考えられる。言い換えると、たとえ資源の利用効率が悪くても、長命で脳に情報を多く貯蔵できる遺伝子をもった集団のほうが、ライバルに勝って生き残ることができた。

なお、現代では、情報は書物やデータベースに貯蔵されるので、ヒトの情報の貯蔵庫としての役割は小さくなっている。(つづく)

文献
Sexual cannibalism increases male material investment in offspring: quantifying terminal reproductive effort in a praying mantis
http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/283/1833/20160656

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投稿者: jcmswordp

著述、企画、編集。農家が教えるシリーズなど

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