ホモ属の超協力超タカ派戦略:Super-cooperative super-hawk strategy of Homo

ダーウィン進化論からESS(進化的に安定な戦略)を検討したが、それからわかることは、ヒト科(Hominidae)ホモ属(Homo)の場合は、「超協力」と「超タカ派」を組み合わせた、「超協力超タカ派戦略」(Super-cooperative super-hawk strategy)をとっていることだ。

ヒト科パン属(Pan)のチンパンジーは、成年オス、成年メス、子供からなる20~100頭の群れを形成し、数十km2の広大な縄張りの中を遊動している。群れの中では、親子など数頭の小集団で行動している。成年のオスとメスは、複数の異性と交尾をする乱婚であり、オスは自分の子供がわからないとされている。

オスは成長しても群れにとどまるが、若いメスは群れを出て、他の群れに移動する行動をとる。メスが移動することで、種の遺伝的多様性を確保している。これは、ホモ属の祖先のアウストラロピテクスでも同様の行動が確認されており、他の集団から移動するメスは50%以上で、オスは10%という報告がある(文献参照)。

群れの中の成年オスたちは、協力して、縄張りの周辺を巡回している。他の群れのオスと出会うと、激しく闘争して、縄張りを奪い合う。拳で殴ったり噛んだりして、相手を殺すことがしばしばある。このため、オスの死亡率はメスよりもかなり高い。ただし、共倒れして双方が死んでしまうほどでもない。すなわち、チンパンジーは、「超協力タカ派」戦略である。

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ゴリラ(ヒト科ゴリラ属Gorilla)のオスは、単独で他のオスと闘争する。すなわち、パン属とホモ属の共通祖先に、「超協力」(社会脳)の遺伝子変異がおこり、多数のオスが協力して他の群れのオスと闘争するようになった。複数vs複数では、オスの数が多いほど有利なので、次第に群れの個体数と縄張りの範囲が大きくなっていったと考えられる。

オスがもとの群れに留まるのも、乱婚の形態をとるのも、そのほうが、オスの共同闘争に有利なためだ。オスは、群れのすべてのオスが、自分の親子、兄弟、従兄弟などの可能性があるので、仲間を裏切らず、見捨てない。

この状態で、腕力が強いほうに変異したのがパン属の祖先で、地上を速く走るほうに変異したのがホモ属の祖先であろう。腕力が弱くても、縄張りの範囲が広大になれば、機動力・持久力が高いほうが有利な場合もある。

ホモ属の祖先のアルディピテクス・ラミドゥスやアウストラロピテクスの犬歯は、小さく退化しており、骨格も華奢である。正面衝突を避けて、地上を2本足で走って長い距離を移動し、後退と奇襲を駆使する戦略をとったと思われる。腕力・瞬発力が高い遺伝子に対して、走力・持久力が高い遺伝子で対抗した。

アルディピテクスが石器などの道具を使っていたかどうかはわかっていないが、アウストラロピテクスは道具を使っていたと考えられている(文献参照)。腕力が弱く、犬歯も使わずに、ライバルを倒すには、武器(道具)を使うほかない。

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しかし、森の中での、「腕力・瞬発力遺伝子」と、「走力・持久力遺伝子」との闘いは、拮抗していたと思われる。どちらかが圧倒的に有利であれば、一方は縄張りを確保できずにすぐに絶滅してしまうはずだ。最終的には、ホモ属の祖先の中で、森に残った遺伝子(アルディピテクス)は絶滅し、草原へ進出した遺伝子(アウストラロピテクス)が生き残った。集団で長距離を走って移動できる形質(社会脳・走力・持久力)と、手で武器や道具を扱う形質によって、森林から草原への進出が可能になったからである。

ホモ属の祖先は、華奢な身体で何らかの武器を携え、集団で走り続ける「超協力タカ派」の戦略をとっていた。この超協力タカ派遺伝子は、いつから、超タカ派戦略をとって、「超協力超タカ派」になったのであろうか。超協力超タカ派とは、精巧な石器など殺傷能力の高い武器を使って、多数のオス同士が、縄張りをめぐって闘争する状態だ。

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それこそが、ホモ属が出現したときであり、ホモ属の初期に大発展した、ホモ・エレクトスではないだろうか。卓越した集団の戦闘力によって、ライバル種を駆逐し、同種の集団同士の激しい縄張り争いによる共倒れを避けた結果、世界中に遺伝子が拡散したと考えられる。ホモ・エレクトスが使っていたアシューリアン石器の形が、メガロドン、スミロドン、デイノテリウムの牙の形とそっくりなのは、偶然ではあるまい。(つづく)

文献
京都大学野生動物研究センター
http://www.wrc.kyoto-u.ac.jp/kumasan/ja/about_chimp/index.html
Strontium isotope evidence for landscape use by early hominins
http://www.nature.com/nature/journal/v474/n7349/abs/nature10149.html
Brains, Brawn, and the Evolution of Human Endurance Running Capabilities
http://link.springer.com/chapter/10.1007%2F978-1-4020-9980-9_8
最初に道具を使った人類はアウストラロピテクス
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20150127/433311/
化石とゲノムで探る 人類の起源と拡散、別冊日経サイエンス、2012
人類進化 今も続くドラマ、日経サイエンス、2014、12

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投稿者: jcmswordp

著述、企画、編集。農家が教えるシリーズ(農文協)など

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