エゴマ、キュウリ、トマト、ピーマンが有機態窒素を吸収しない理由

「有機か無機か?」の最後。有機質肥料の施用効果が低い作物で、レタスやソバについて触れたが、残りのエゴマ、キュウリ、トマト、ピーマンについても書いておく。これらの植物に共通しているのは、キク科の植物と同じで毒を有することだ(参照:キク科植物の巧みな昆虫コントロール)。

二瓶

エゴマはシソ科の一年草で、中国、韓国、日本に広く自生する。古代から中国、韓国、日本、東南アジアの北部、ヒマラヤ山脈の周辺で栽培されてきた。原産地は中国中部と考えられている。アジアではゴマよりも古くから利用され、日本でも5000年前の縄文時代前期の遺跡から出土している。エゴマの葉には、ペリラケトンやエゴマケトンなどの3位置換フラン化合物が含まれ、独特の匂いがある。これらの化合物は、サツマイモが、昆虫に食害されたりカビが生えると生成する毒性成分のファイトアレキシンに構造がよく似ている。ウシやシカなどの反芻動物が、ペリラケトンやエゴマケトンを大量に摂取すると、肺水腫や肺気腫を起こすことが知られている(文献)。毒に匂いがあるのは、毒であることを動物たちに学習させるためである。

キュウリはウリ科の一年草で、ヒマラヤ山脈やからネパール付近に分布する野生キュウリから栽培化されたと考えられている。ウリ科植物は、ステロイドの一種であるククルビタシンを有しており、苦味の成分になっている。ユウガオ(カンピョウ、ヒョウタンも同種)、ヘチマ、ズッキーニでは、ククルビタシン成分が高いものが混入することがあり、これを食べると、食中毒(おう吐や下痢等)を発症する(文献)。ククルビタシンはウリ科とゴマノハグサ科に特有の物質で、もっと調べればいろいろと面白いことがあると思う。たとえば、畑でキュウリを栽培していると、ナス、ピーマンなどを食べまくるヤガ科のヨトウムシは、キュウリをまったく食べない。もともとウリ科植物は雌雄異花で、昆虫に花粉を運んでもらわないと実をつけられない。その花粉を運ぶのがヤガ類などである。ウリ科植物の一部(ユウガオなど)は、夜に活動するヤガ類を花に誘引しており、それがククルビタシンに由来する物質かもしれない。

ウリハムシ

クロウリハムシを捕食するアカサシガメ

さらに、ウリ科植物を好んで食べるウリハムシは、ククルビタシン(もしくは由来物質)に誘引されてやってくる。じつは、ウリハムシは体内に毒のククルビタシンをため込んで、鳥やカエルなどから身を守っている。なお、ククルビタシンは、窒素成分が多くなると、増えることが知られている(キャベツの話と似てきた)。ウリハムシには黄色のウリハムシと、黒い色のクロウリハムシがいる。これは生活環境によって主な天敵が違うためであろう。両生類や鳥類は視覚がすぐれているので、ウリハムシは黄色でめだつようにして、自分が有毒であることをわざと知らせて学習させている。クロウリハムシはできるだけ反射光を少なくして、ジョウカイボン、サシガメ、カマキリなど肉食昆虫から目立たないようにしている。黄色のウリハムシのほうが圧倒的に多いのは、アマガエルや鳥の数が激減してしまったためなのかもしれない。ほかにも、キュウリは、炭疽病と斑点細菌病に対して、PGPF(植物生育促進菌類)によるISR(誘導全身抵抗性)を発現することが確認されており、さらに、オオイタドリの抽出液は、キュウリなどウリ科植物のうどんこ病やコムギうどんこ病の抵抗性を誘導することが示されている(文献)。

うどんこ

キュウリのうどんこ病はオオイタドリ抽出液で抑えられる

トマトはナス科の多年草で、トマト類の多くは南米北西部高原地帯(ペルー、エクアドル)に分布している。ただし、栽培トマトの野生型は、中央アメリカに広く自生しており、トマトはメキシコで栽培化されたと考えられている。トマトの樹体には、アルカロイド配糖体のトマチンが含まれている。トマチンの含有量がもっとも多いのは花で、葉、茎、未熟果実の順になる。完熟前の果実や完熟果実にはごくわずかしか含まれていない。トマチンは、ハムシなどに対する忌避性と、いくつかの細菌と真菌類に対する抗菌性が確認されている。花に含有量がもっとも多いことから考えると、受粉のために蜂などの昆虫を誘引する役割もあるのかもしれない。なお、トマチンは、試薬や薬としても利用されている。

最近の研究では、植物は「集団的自衛システム」を持っていることも発見されている。トマトがハスモンヨトウに食害されると、十数種類の香り成分を放出する。その香り成分を別のトマトに曝露して、ハスモンヨトウに食べさせると、幼虫の成育が抑制される。これは、トマトが、無毒な香り化合物(ヘキセニルビシアノシド)を取り込んで、毒性のある化合物に変換しているためであるという。このシステムは他の多くの植物でも見られるらしい(文献)。

ヘキセ

「植物間の香りを介したシグナリングの仕組みの解明に成功」より

ピーマンはトウガラシと同種の植物であり、ナス科の一年草である。トウガラシといえば、その辛味成分は、アルカロイドのカプサイシンであることはよく知られている。カプサイシンは、昆虫に対する忌避効果や真菌類への抗菌性が報告されているが、もっとも強い忌避性や毒性を示すのは哺乳動物に対してである。近年の研究では、これは、果実が哺乳類に食害されるのを防ぎ、鳥類に食べられることで、種子を拡散するためと報告されている(文献)。鳥類は辛味を感じないらしい。

 

文献

エゴマ、農研機構

http://www.naro.affrc.go.jp/org/niah/disease_poisoning/plants/perilla.html

自然毒のリスクプロファイル:高等植物:ユウガオ

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000079844.html

オーストリア保健・食品安全局(AGES)、「なぜヒョウタンは食べられないのか?」を公表

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu03460440464

農家が教える病害虫防除ハンドブック、農山漁村文化協会、2009

石井英夫、作物の誘導抵抗性を利用した妨害防除

http://www.niaes.affrc.go.jp/techdoc/inovlec2004/2-5.pdf

植物病原体阻害剤組合せおよび使用方法

http://www.ekouhou.net/%E6%A4%8D%E7%89%A9%E7%97%85%E5%8E%9F%E4%BD%93%E9%98%BB%E5%AE%B3%E5%89%A4%E7%B5%84%E5%90%88%E3%81%9B%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E4%BD%BF%E7%94%A8%E6%96%B9%E6%B3%95/disp-A,2013-500981.html

植物間の香りを介したシグナリングの仕組みの解明に成功

http://www.yamaguchi-u.ac.jp/library/user_data/upload/Image/topics/2014/14042901.pdf

Joshua J. Tewksbury, Gary P. Nbhan,2001, Seed dispersal. Directed deterrence by capsaicin in chilies

http://tewksburylab.org/wp-content/uploads/2012/03/deterrence_nature_2001.pdf

 

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投稿者: jcmswordp

著述、企画、編集。農家が教えるシリーズなど

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