野菜のおいしさ(硝酸イオン)と施肥法

日本のスーパーに並んでいる普通の野菜は、アメリカのオーガニック野菜と同じくらい美味であり、硝酸イオンが問題になることはほとんどない。さらに、野菜の中では硝酸イオンが高い、ホウレンソウ、ターサイ、シュンギクなどは、日本人は生で食べず、ゆでたり煮たり炒めたりするので、硝酸濃度はさらに下がる。なので、論理的には、今回のテーマを取り上げる必要はないのだが、前回うっかり書くと言ってしまったので、とりあえず、個人的な視点を書いてみる。

硝酸

窒素のぜいたく吸収を防ぐ方法は、窒素の施用を減らすことだ。しかし、窒素の施用を減らすと収穫量が落ちるので、農家は、そのぎりぎりのところをねらって施肥法や施肥量を決める。昔からの一般的な施肥の方法は、播種や定植の前に元肥を施用して、土によくなじませておくという方法だ。これは、作物の都合ではなくて、あくまでも作業上の都合からきている。作物の栄養状態や生長にあわせて、少しずつ追肥するのは、手間がかかる。手間がかかれば、生産コストが高くなる。

そもそも硝酸が問題になったのは、北米やヨーロッパでおきた「ブルーベビー」(メトヘモグロビン血症)である。硝酸塩濃度の高い水で作られたミルクを飲んだ乳児に、メトヘモグロビン血症が発生し、大きな不安をもたらした。生後3か月未満の乳児は、胃酸をほとんど分泌しないので、胃の中で微生物が活動して硝酸塩を還元し、亜硝酸塩が生成したためとされている。

一方、日本では風土や習慣のちがいもあって、ほとんど問題にならなかった。ところが、2000年代に、日本でも問題視されるようになり(新聞記事?)、国は2006年に対策を策定している。

野菜中の硝酸塩に関する情報について

http://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/joho/0507/joho01.html

野菜等の硝酸塩に関する情報

http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/syosanen/index.html

野菜の硝酸イオン低減化マニュアル

http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/laboratory/vegetea/pamph/010749.html

具体的な技術の内容は、上の「野菜の硝酸イオン低減化マニュアル」を読んでほしいのだが、野菜の硝酸イオンを減らすには、以下の方法をとる。

①硝酸イオンの還元速度を速める

②硝酸イオンの過剰吸収を抑える

③品種の選択

④追肥と収穫方法

①については、興味深いことが書いてある。「硝酸イオン濃度は、昼間低く夜高い日周変動」となる。「硝酸イオンの還元速度を上げ、硝酸イオン濃度を下げるためには、被覆資材の透明度を保つ、遮光はしない、収穫は曇天の次の日はしない、できれば晴天が続いた日の午後に収穫する、施設内の温度を上げすぎない」という。

④については、誰でもすぐにできることとして、「収穫時における土壌中の肥料成分をできるだけ少なくするために、追肥はなるべく控え、どうしても必要な場合は早めに施用する、あるいは在圃期間を数日間、品質に影響のない程度長めにする、また、外葉ほど硝酸イオン濃度が高い場合が多いので、収穫時に外葉を若干多めに除去して調整する」と述べている。

②については、各県の農業試験場による取り組みが詳しく紹介されているが、以下の方法に大別できる。

養液土耕による自動給肥

たしかに養液土耕は、施肥量を大幅に減らせるため、指導機関はかなり力を入れて普及をすすめているようだ。ただし、養液土耕の初期導入には100万円以上かかるし、肥料は液肥(化学肥料)を全部購入しないといけない。プログラムも自分で作れるわけではないので、他の生産者との差別化ができない。水耕栽培とたいして変わらないので、消費費に対するアピールも弱い。消費者は、科学的・合理的に栽培された野菜だからといって、高い値段で買うわけではない。そこが難しいところだ。

堆肥の使い方の工夫

岩手県が行っている、C/N比の高い堆肥を利用して、硝酸濃度の下げるやり方はおもしろい。土壌中の微生物は、C/N比の高い有機物を分解・利用して増殖する際に、土壌中の窒素を吸収する働きがある。これは「窒素飢餓」と呼ばれ、一般には悪いこととされている。あえてC/N比20の堆肥を施用することで、土壌中の窒素を微生物の体内に取り込ませている。地域の家畜糞尿も利用できるし、資源循環型の農業として消費者にアピールできるので、他産地との差別化ができる(高く売れる)。

炭素率.jpg

緩効性肥料の利用

これは、大きな設備投資が不要だし、農家にとってもっとも楽な方法であろう。肥料メーカーは競って緩効性の化学肥料や、緩効性の有機質肥料まで開発している。ただし、養液土耕と同じような課題がある。

一方、有機栽培の農家で、適正施肥によって高い品質と生産性を実現している人は、私が見たり聞いたりした中では、三重県の福広博敏さんだろう。福広さんは自分で土壌診断の器具を買って、簡易土壌診断を年間70~80回も行っていた(当時)。堆肥や有機質肥料も自分で配合しており、年間の肥料代は3分の1になったという。販売は有機野菜として契約出荷しており、年間売上は2000万になる。(力つきたので、つづく)

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投稿者: jcmswordp

著述、企画、編集。農家が教えるシリーズなど

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