植物の複雑な繁殖様式

植物の繁殖様式を知っていないと、せっかく果樹の苗木を買ってきて庭に植えても、いっこうに実がならないということがよくおきる。たとえば、バラ科など自家不和合の植物では、異なる品種の受粉樹を一緒に植えないと、結実しない。

植物は一般に有性生殖である。植物や動物などの真核生物では、減数分裂によって2倍体の細胞から1倍体の細胞(配偶子)が生じる。その際、相同染色体の一部を交換する「組換え」が起きる。有性生殖によって、世代のたびに遺伝子の交換と組換えが行われる。

植物の有性生殖には、他家交配と自家交配がある。自家交配する植物は1個体でも繁殖できるので、河川の氾濫原などニッチへの進出に有利である。他家交配の植物は、競合者や寄生者との競争に有利なので、安定した生態系での生存に有利である。なお、他家交配と自家交配は完全に分かれているわけではなく、自家交配の植物は他家交配もするし、自家不和合による他家交配とされる植物でも、老化した花などでは自家交配が可能になる。

さらに植物には、受精なしで種子ができる無性生殖や、子芋、ランナー、地下茎などで栄養繁殖するものがある。

被子植物(一部裸子植物)の生殖器官を、「花」と定義している。多くの被子植物の花には、雄しべと雌しべの両方があり、これを両性花という。雄しべだけのものを雄花、雌しべだけを雌花という(単性花)。雄しべも雌しべもない無性花もある。また、形態上は両性花であっても、花粉に発芽能力のない雄性不稔や、雌しべに受精能力のないものがある。さらに、高温などの環境条件によって、両性花が雄花になったりすることが知られている。

個体の花の雌雄性

植物は、一つの個体(株)に複数の花を咲かせることが多いので、これらの組合せが多くある。一般的には、①両性花のみ、②雌花のみ、③雄花のみ、④雌花+雄花、⑤両性花+雌花、⑥両性花+雄花、⑦両性花+雌花+雄花であるが、上のように花の雌雄性は固定的でないためにより複雑である。

集団内の性の組合せ

次に、同一種の集団内での個体の性の組合わせは、①両性株のみ、②雌株+雄株、③両性株+雌株、④両性株+雄株、⑤両性株+雌株+雄株であるが、じっさいにはより多様で複雑である。

知られている代表的な性型には以下のようなものがある。

両全性…両性花のみの両性株のみ。被子植物にもっとも多い性型。

雌雄異花同株…雌花+雄花の両性株のみ。ブナ科、ウリ科、クルミ科、アケビ科、バショウ科など。

雌性両全性同株…両性花+雌花の両性株のみ。キク科の一部など。

雄性両全性同株…両性花+雄花の両性株のみ。ツユクサ科、ムクロジ科など。

三性同株…両性花+雌花+雄花の両性株のみ。レイシ(ムクロジ科)など。

雌雄異株…雌株+雄株。ブドウ科、モチノキ科、ウルシ科、ヤマモモ科、キウイフルーツ(マタタビ科)、イチョウなど。野生ブドウは雌雄異株だが、両全型の栽培ブドウが出現した。

雌性両性異株‥両性株+雌株。イチジク(クワ科)、クワなど。

雄性両性異株…両性株+雄株。マタタビ科など。ただしマタタビやサルナシの両性花の雄しべは偽花粉であり、両性株だけでは実を着けない。

三性異株…両性株+雄株+雌株。パパイアは、雌株、雄株、両性株、両性雄花(両性花+雄花)株、雌雄同株が存在する。

交配

一般には受粉と呼ばれるが、より詳細には、送粉→受精→交配という経過をたどる。自家受粉では、自家送粉→自家受精→自家交配となり、他家受粉では、他家送粉→他家受精→他家交配となる。

送粉の方法は、昆虫、鳥、コウモリ、風、水などであり、花粉が自動的に柱頭に着く自動同花送粉もある。

自家交配を防ぐ機構

自動同花送粉+自家交配という方法が、もっとも確実に種子ができるが、多くの植物が、以下のような機構を組合せて自家交配を防いでいる。

自家不和合…同じ株の花粉が柱頭についても、花粉の発芽や花粉管の伸長が正常に進まず、受精に至らない。かなり高い確率で自家交配を阻止できる。バラ科、ナス科、アブラナ科、イネ科、マメ科、キク科、ケシ科、ヒルガオ科、サクラソウ科、カタバミ科、タデ科、ブナ科など。被子植物種のうち、おおよそ50%が自家不和合性と考えられている。なお、栽培イネや栽培ダイズなどの作物では、自家交配する種類が選抜されてきた。

雌雄異花…雌花と雄花が分かれている。

雌雄異株…雌株と雄株に分かれている。

雌雄異熟…一つの両性花や一つの雌雄同株で、雄しべから花粉が放出される時期と、雌しべの柱頭が受精しやすい時期がずれている。雌性先熟、雄性先熟、異型雌雄異熟などがある。クルミ科、クスノキ科、バンレイシ科、トケイソウ科、ムクロジ科など。

雌雄離熟…両性花だが、雌しべの柱頭と雄しべの葯が離れている。ユリなど。

順次開花…同じ株の花が同時に開花しないで、順次開花する。昆虫などを引き寄せる効果が弱まるので、大花になるものが多い。

参考

渡邊嘉典 減数分裂 多様さを生み出す厳格なしくみ

http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/060/research_21.html

福原達人 植物形態学

https://ww1.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/keitai/index.html

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投稿者: jcmswordp

著述、企画、編集。農家が教えるシリーズなど

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