農家が教える トマトつくり

一昨年に企画・編集した本。手前味噌だが、書評を書いてくれる人もないので、自分で紹介してみる。本のおおざっぱな構成は

1、トマト栽培のプロ農家の技術を紹介する

2、トマトのユニークな品種の紹介

3、トマト栽培の研究者に栽培法の基礎をまとめてもらう

で、これを読めば、現在のトマト栽培技術のほとんどのことはわかるようになっている。

B5版でページ数は176ページなので、そんなに分厚い本ではないが、内容は情報を厳選してあり、無駄な情報や余白はほとんどない。

1ページあたりの平均の文字数は1000字で、全部で170,000字以上ある。写真は167枚、図版の数は89、表は36使用している。

これで、税込み1,296円なので、情報量からすると、かなりお得なはずだが、逆に情報量が多くて読むには多少骨がおれる。

一般の趣味の園芸の人を対象に、ごく簡潔に作ることもできたのかもしれないが、そのような本は他にもたくさん発売されているので、より詳しい情報を欲しい人の要求に答えられるようにした。あと、本物の日本のプロの農家やプロの研究者たちが、悩んだり、考えたり、苦しんだり、試行錯誤を繰り返しながら、おいしいトマトを作っていることを、多くの人に知ってほしかった。そのように作られたトマトを、私たちはふだん食べている。

農家の技術のトップに登場するのは茨城県鉾田市の伊藤健さん。伊藤さんは茨城県の指導農業士で40年以上のベテラン農家。伊藤さんのトマトは、2月下~7月中旬の長期どりで、27段も収穫する。結婚して作業を一緒にやっている奥さんの手荒れがひどかったため、減農薬栽培に取り組むようになった。この減農薬トマトを築地市場にもちこみ、やがて品質が評価されて都内の高級青果店で高額で取引されるようになった。しかし、セレブご用達のトマトを作ることに、次第に違和感をおぼえるようになり、現在は全量を地元のスーパーに契約出荷している。伊藤さんはこれまでに何人もの研修生を受け入れており、弟子たちは全国でトマト栽培に取り組んでいる。伊藤さんの減農薬栽培法、高糖度のトマトつくり、土づくり、炭酸ガス施用、種まきと苗作りなどのノウハウを、詳細に紹介している。たとえば、下の図のような種まきのコツは、教科書など他の本では見たことがないやり方で、とても参考になる。

タネまき

トマト栽培にかかわる人なら、名前を知らない人はいないのが、千葉県横芝光町の若梅健司さんと埼玉県熊谷市の養田昇さん。おふたりとも日本のトマト栽培のレジェンド(伝説)と呼ぶにふさわしい。

若梅健司さんは、日本のトマト栽培の先駆者のひとりで、1946年から70年間もトマトを栽培している。種苗メーカーから栽培試験を委託され、数多くのトマト品種の栽培法に精通している。千葉県指導農業士、千葉県農業大学校講師、農水省農業技術の匠を歴任。若梅さんは、昔から自分の栽培記録をノートに詳しく書き残しており、そのノートをもとに、1年間の作業をつうじて、トマト栽培のコツを詳述していただいた。

養田昇さんも、トマトを栽培しはじめたのは1946年だ。全国野菜研究会の会長を務め、全国にのべ50人以上の弟子がいる。養田さんは、トマト名人の名に満足せず、直立Uターン整枝や不耕起栽培など新しい技術に次々と挑戦している。その自然や作物に対する謙虚な姿勢がすばらしい。トマトの品質が高いため、生産したトマトは、直売所や宅配ですべて売れてしまう。

上の方々だけでなく、本書に登場する農家は、日本の農業の発展のために、自分の技術や知識をおしみなく公開してくれており、人格がすばらしい。

研究者も最前線で活躍されておられる方ばかりだが、望月龍也さんは、イチゴ品種の「さちのか」などの育成者としても著名で、農研機構野菜茶業研究所長も務めた。青木宏史さんは、連続摘心整枝法の開発者として有名で、千葉県農業試験場を経て、みかど育種農場の研究農場長を務めた方だ。

目次

トマト栽培 プロのコツ
27段収穫する高糖度トマト    伊藤健
挿し木苗をポットごと定植    大木寛
不耕起トマト 着果が安定、収量が向上   時枝茂行
ミニトマト 三本仕立てで苗代半分、根張りは抜群   田上輝行
大玉トマト 六本の側枝をUターンさせて25tとる   植松正樹
オランダのトマト100tどりの秘密    中野明正
未熟稲わら10t投入でトマト二割増収   古谷茂貴
トマトのリアルタイム栄養診断    山田良三
硝酸イオンメーターで栄養診断して追肥   市原知幸
山砂播種床で鍛えたトマト苗は抜群の活着   所沢基光

個性的なトマトの品種
完熟どりトマトを加工して売る   馬場 亮
「紅涙」の多本仕立て無かん水栽培   小川光
ドライトマト「ボルゲーゼ」    宮入隆通
天日乾燥で美味、ドライトマト向き品種   曽我井陽充
「玉光デリシャス」    今野文隆
「すずこま」クッキングトマト    由比 進

精農家の栽培技術
トマト栽培60年 ハウス抑制栽培    若梅健司
トマト 不耕起・平うね栽培    養田昇

トマト栽培の基礎
原産と来歴     望月龍也
植物としての特徴    望月龍也
作物としての特性と分類    望月龍也
形態的特性     鈴木克己
生理、生態的特性    東出忠桐
播種法と発芽     高野邦治
育苗方法(ポット苗)    藤本豊秋
再育苗(セル成型苗)    吉岡宏
自家製培養土の素材(ポット苗)   本島俊明
培養土の作り方(ポット苗)   本島俊明
土壌の条件     鈴木秀章
養分吸収の特徴と施肥の考え方   武井昭夫
第三花房開花までの水管理   荒木陽一
生育後期の水管理    荒木陽一
トマトの整枝法     青木宏史
直立1本整枝法     青木宏史
直立Uターン整枝法    青木宏史
連続摘心整枝法     青木宏史
直立二本整枝法     青木宏史
主枝プラス側枝どり整枝    青木宏史
芯止まり型トマトの整枝法   青木宏史
夏秋栽培     矢ノ口幸夫
促成栽培 九州タイプ    末永善久
促成栽培 関東タイプ    鈴木秀章
抑制栽培     鈴木秀章
ミニトマト     河合仁

農家が教える トマトつくり
農山漁村文化協会
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投稿者: jcmswordp

著述、企画、編集。農家が教えるシリーズ(農文協)など

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